金沢市寺町5丁目に「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」が2019年7月26日(金)に開館しました。
金沢出身の日本・世界を代表する建築家谷口吉郎氏、谷口吉生氏の作品展示のほか、江戸時代から現代まで多種多様な建築がある金沢の都市と建築文化を国内外へ発信する施設となります。
概要
名称 | 谷口吉郎・吉生記念金沢建築館 |
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所在地 | 石川県金沢市寺町5丁目1-18 |
敷地面積 | 2,034㎡ |
建築面積 | 836㎡ |
延床面積 | 1,476㎡ |
構造 | 地上2階 地下1階 |
設計 | 谷口建築設計事務所 |
場所は寺町5丁目の谷口吉郎氏の生家があった場所、設計は谷口吉生氏となっています。
谷口吉郎氏と吉生氏についてはこちらに詳しく書きました。
外観
外観はこのような感じです。石貼りにアルミルーバー、ガラスとシンプルな外観となっています。
石はブラジル産の花こう岩を使用しており、シンプルな外観ですが、素材へのこだわりを感じます。
1階は寺町通りに面してガラス張りとなっており、賑わいを創出しています。
ロゴ
エントランスも直線的にシンプルにまとまっています。
横から見るとL字型にせり出しています。
館内へ入ります
館内のほうへ入っていくと手前に受付があり、そこで入館料を支払います。
※大人300円(65歳以上200円)、高校生以下は無料です。
館内に建築模型が展示されていることもあり、リュックサックなど荷物が大きいとコインロッカーに預けるよう勧められます。100円でコインが戻ってくる形式なので、展示物を傷つけないよう、預けたほうがいいかもしれません。
1階 ホール
受付から入ると、まずは1階ホールへ案内されます。
1階と2階が吹き抜けており、打ちっぱなしコンクリートと天井の隙間には明り取りの窓があり、光が降り注いできます。
ホールに設置されているモニターには、金沢市が取り組んできた景観を守る取り組みと歴史、金沢の近代から現代までの建築などの案内が紹介されています。
階段を上ると2階へ行きます。
地下1階に企画展示室があり、谷口吉郎氏の建築に焦点を当てた特別展示が行われていました。谷口吉郎氏の建築を30分の動画で紹介、時系列でパネル展示、模型展示などが行われており、濃い内容となっていました。
また、建築を知らない方でも分かりやすいような解説文となっており、読みやすかったです。
企画展示室横にはサンクンガーデンがあり外の光が取り込まれていました。
※写真撮影禁止なので、写真はありません…
2階 游心亭の空間常設展示
2階の自動ドアが開くと、常設展示室として、迎賓館赤坂離宮和風別館の「游心亭」の空間展示があります。
游心亭(ゆうしんてい)は、国賓・公賓に和のおもてなしを提供する場で、昭和49年(1974年)に谷口吉郎氏が設計しました。
今回、金沢建築館が開館するにあたって、忠実に空間を再現しています。
かつてあったものを「復元」するのではなく、今あるものを模型ではなく実物大で「再現」するという展示手法は非常に珍しいです。
実際の赤坂離宮にある游心亭は見学ツアーがあるものの、写真撮影禁止ですが、金沢にできた游心亭では常設展示として撮影が可能です。
設計に携わった谷口吉郎氏の意匠をゆっくりと眺めることができます。
特に外の景色を取り込むため斜め天井となっていることが特徴的でした。
そして、広がる47畳の大空間。
特に天井に銅釘を用いたところや、
六角形の形をした照明など、日本古来の伝統と谷口吉郎氏がイメージした和が組み合わさって誕生した空間であることを感じました。
游心亭の先には水盤があります。
水盤が特徴の一つである、谷口吉生の建築らしさが出ていて、金沢建築館の常設展示空間は親子で作り上げた建築のように感じられました。
この水盤や常設展示室の床にもイタリアやブラジル産の石材が使用されているとのことです。
水盤に映える青空と白い雲が気持ちいいですね。
空間を切り出したように広がる景色は、屋内の游心亭の空間と相まって、おもてなしをされているかのような格別な空間となっています。
また、茶室も游心亭にあるものが「空間展示」されています。
茶室は変化に富んだ空間が特徴的で、変化に富んでいるものの、全体は「和」としての統一感が感じられました。そういったおさまりの良さが谷口吉郎氏の評価される点でもあるのかもしれません。
2階より1階を見下ろす
常設展示を抜けると、1階へ戻る階段があります。
アルミルーバーのおかげで南側にもかかわらず直射日光を受けない工夫がされています。
階段を降りるとミュージアムショップとカフェ「茶房 楓 produce by MAPLE HOUSE」があります。ここで最後に一休憩していくのも良さそうです。
寺町台地の段丘崖を結ぶ回遊路
金沢建築館の開館と同時に供用されたのは、建物裏手の犀川と台地を結ぶ回遊路です。
金沢建築館は寺町台地といわれる台地の上に立っており、裏手は崖地となっています。その間に階段の散策路が設けられました。
回遊路より寺町通り方向を望む。
下へ階段で降りていきます。
足元には照明があり、館内閉館後も24時間通行が可能となっています。
金沢にはこうした台地と下側を結ぶ坂や階段があり「坂の街」とも言われますが、その中でも最も新しい通路となりますね。
坂の途中からは手前には旧金沢モリス教会のレンガ造りの教会建築、奥には犀川の河川敷や医王山、金沢の街並みを望むことができます。
敷地裏手から見た様子です。
裏側は木々に覆われており、段丘崖の連続する緑地帯となるよう植栽されています。
また、崖地の勾配に沿って、建物も階段状にするなど工夫がされています。
階段を降りると室生犀星ゆかりの犀川沿い、そして散策路「犀星のみち」へ出ることができます。変化に富む金沢の地形と建築を眺めることができる場所です。
上流側は医王山麓から流れる犀川のせせらぎが聞こえ、自然あふれる風景が広がります。
金沢のこういった繁華性と落ち着きのバランスが良いのが非常に好きです。
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館へのアクセス
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館へのアクセスは以下の通りです。
名称 | 谷口吉郎・吉生記念金沢建築館 |
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所在地 | 石川県金沢市寺町5丁目1-18 |
入館料 | 300円(65歳以上200円) 高校生以下は無料 |
開館時間 | 9時30分-17時(入館は16時30分まで) |
休館日 | 月曜日(※)/年末年始(12月29日から1月3日) ※月曜日が祝日の場合はその直後の平日が休館日 |
備考 | 駐車場は無いため、公共交通機関での来館となります。 |
公式サイト | https://www.kanazawa-museum.jp/architecture/ |
- 金沢駅からタクシー約15分
- 最寄りバス停
城下まち周遊バス、北陸鉄道バス「広小路」
金沢ふらっとバス長町ルート「24 野町広小路」
となります。
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館の駐車場は?
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館の駐車場はないため、公共交通機関で訪れることをお勧めします。
…が、どうしても車で訪れたい方は周辺にコインパーキングがあります。
特に名鉄協商パーキングは、金沢建築館の裏手にあり、最後に紹介した散策路を登っていけば金沢建築館にたどり着くので最寄の駐車場だと思われます。
(地図上の左下に建設中なのが金沢建築館です)
過去記事
・谷口吉郎・吉生記念金沢建築館 2019年7月26日(金)開館!谷口氏・金沢の建築発信施設に!
・谷口吉郎・吉生記念金沢建築館 建設工事 2019.5
・谷口吉郎・吉生記念金沢建築館 建設工事 2019.1
・金沢市寺町の 建築文化拠点施設(建築博物館) 建設工事 2018.10
・金沢市寺町の 建築文化拠点施設(建築博物館) 建設工事 2018.9
・金沢市寺町の 建築文化拠点施設(建築博物館) 建設工事 2017.12
・金沢に国内初の建築博物館が誕生します!谷口吉生氏が設計