金沢に建築文化を発信する拠点となる施設の建設が決まりました。
いわゆる、建築模型などを展示する建築博物館で、建築博物館が完成すれば国内初(※)となります。
設計は金沢にゆかりのある世界的建築家の谷口吉生氏に決まりました。
※国内初について、私宛に様々な意見が寄せられましたが、地元紙の記事「日本初の建築博物館整備へ 谷口親子の資料を核に金沢市(北國新聞 )」が2015年に掲載されたことから判断したもので、何をもって国内初とするかなど明確なものは明らかになっていません。ご了承ください。
2017年7月11日 建設予定地の写真を追加しました。
場所
場所はどこになるのかというと、金沢市寺町になります。
元々、谷口吉生氏の父親にあたる、谷口吉郎氏の生家があった場所です。
谷口吉生氏が土地を金沢市に寄付しました。
蛤坂近く、寺町台地の上にあり、犀川や金沢の市街地を見下ろすことが出来る場所です。
ロケーションは大変いい場所となってます。
谷口吉郎氏と谷口吉生氏について
建築文化拠点施設の設計を手掛ける、谷口吉生氏は現在も多くの建築物を手掛ける世界的な建築家で、代表作としてニューヨーク近代美術館や豊田市美術館、東京国立博物館などがあります。
石川県にも鈴木大拙館や片山津温泉総湯などの作品があります。
吉生氏の父親にあたる、谷口吉郎氏は金沢市の九谷焼の窯元の家に生まれました。非常に有名な建築家で、代表作として、藤村記念堂や東宮御所、東京国立博物館東洋館などがあります。
金沢にも石川県繊維会館(現:西町研修館)や石川県美術館(現:石川県立伝統産業工芸館)などの作品があります。
金沢市の名誉市民の第1号の人物でもあります。
※個人的には秩父セメント第2工場が好きです。今までの工場のイメージを払拭した美しい建築物となっています。
また、金沢市には谷口吉郎氏と谷口吉生氏による最初で最後の親子共同で設計した作品である、金沢市立玉川図書館があり、アーキテクチャーツーリズム(建築巡り)としても多くの観光客や学生が訪れています。
完成イメージ
(北陸建設工業新聞より引用)
設計は谷口吉生氏が手掛けました。
寺町通りに面して建ち、箱を合わせたような建物となっており、スッキリとした外観になっています。
無駄なものは極力無くした、引き算の建築であるように感じます。
北側から見たイメージです。寺町台地の上に建っているというのが分かるのではないでしょうか?
台地の下からは木々に覆われ、段丘崖の緑地帯を連続させるみたいです。
台地の下と建物を結ぶ新たな散策路も設けられるみたいです。
館内2階には游心亭を再現
(日本経済新聞 2017年6月30日)
建築博物館の館内2階は東京の迎賓館赤坂離宮にある游心亭が再現されます!
游心亭(ゆうしんてい)は、国賓・公賓に和のおもてなしを提供する場で、昭和49年(1974年)に谷口吉郎氏が設計しました。
今回は谷口吉生氏が游心亭を再現し、建築博物館の目玉に、47畳もの巨大な和室、そして窓越しには水を張った水盤を設け、その先に金沢の街並みが見える贅沢な空間となります。
内部は一般公開もされるみたいで、建築を通して谷口氏の建築思想が分かる空間であり、市民の交流施設、来客を迎える迎賓館としても活用されるみたいです。
東京の游心亭では国賓・公賓をおもてなしする施設なだけに、金沢の游心亭でも同様に迎賓館としての機能も果たすことになるみたいですね。
他のフロアは
1階がエントランスとなり、地下1階は企画展示室となるみたいです。
企画展示室では、谷口吉郎氏の遺品や、都市や建築に関する展示、講演スペースなどが設けられます。
おそらく、1階エントランスから地下空間の企画展示室へ案内された後、2階の游心亭の開放的な空間へ導く演出となっているのかなと想像しています。
2014年12月には[谷口吉郎・谷口吉生]展 金沢が育んだ二人の建築家が行われていました。この際に展示された建築模型は全て、金沢市に寄贈されたそうで、展示室には谷口氏の建築模型が多く並ぶのではないでしょうか。
現在の様子
2017年7月8日に建設地を見てきました。
旧谷口邸は解体され、更地になっていました。
場所は、寺町大通り沿いにあり、周辺は寺院や金澤町家が立ち並ぶ、金沢の中でも昔から変わらない風景があるエリアとなっています。
最近、無電柱化がされ、景観も向上しました。
金沢市街地方向を望む。
この土地自体が大地の上にあるので、奥に見える森の奥には、犀川と金沢市街地が一望できる絶好のロケーションとなります。
寺町台地には観光地が少なく、この界隈の街並みを観光客の方に見てもらう機会も少なくもったいないと感じていました。
建築文化拠点施設が建てられることで、周辺の回遊性も向上しそうです。
開館予定は
開館は2019年を予定しているそうです。
2年後と考えるとまだまだ先ですね・・・
金沢は非戦災都市であり、江戸から明治、大正、昭和、平成と建築が重層的にある「バウムクーヘン都市」と呼ばれています。そして、軍都や学都として栄えた歴史から、それに関連した建築物も残っていたり非常に面白い都市です。
石川県と金沢市を挙げて、建築観光を「アーキテクチャーツーリズム」と名付け、建築文化を発信しています。そういった建築文化を発信する拠点となる、建築博物館の開館は非常に楽しみです。
私自身もまちゲーション建築名鑑を通して、金沢を中心とした建築文化を発信できるサイトを製作中です。