金沢でホテルの建設ラッシュが再燃しています。
舞台は、北陸髄一のオフィス街上堤町・下堤町界隈です。
北陸新幹線開業前から、北國銀行本館跡地の再開発でホテルが建設されることが決まっていましたが、開業後にホテル需要が供給に追い付かなくなる事態となり、このエリアにおいてホテル計画が相次いでいます。
金沢のホテル建設ラッシュの波
近年、金沢ではホテル建設ラッシュがありました。
2004年12月に長野~金沢間のフル規格一括整備が決められ、2005年4月に富山~金沢間の工事実施計画が認可されたときに、北陸新幹線金沢開業の目途がついたこと、金沢駅東口広場(もてなしドーム・鼓門)の完成及び、金沢駅北土地区画整理事業が施行されたことから、金沢駅東口においてホテル建設ラッシュが起こり、2005年ごろ~2007年ごろまではプチバブルと呼ばれました。
この時期に金沢フォーラス(2006年開業)がある金沢駅北地区が大きく変貌を遂げることになりました。
続いて、2014年に、2015年3月の北陸新幹線金沢開業を見据え、金沢駅西口でホテル2棟が建設されました。(香林坊でも1棟竣工しています)
金沢駅西口では同時に北國銀行本店ビルやJRのオフィスビル、マンション2棟、専門学校、などが建設されました。
そして、北陸新幹線金沢開業後の観光客の増加に伴い、現在、金沢市中心部の上堤町・下堤町界隈でホテル建設ラッシュが相次いています。
上堤町・下堤町界隈になぜホテルの建設が相次ぐ?
なぜ、上堤町・下堤町界隈でホテルの建設が相次いでいるのでしょうか?あくまで個人的予想ですが、大きく2つあると考えています。
1.金沢市内の観光地へアクセス抜群な点
上堤町交差点から各観光地まで道路に沿って最短距離を調べてみました。
近江町市場 250m
尾山神社 470m
金沢城公園(黒門) 500m
ひがし茶屋街 1200m
と、金沢駅周辺と比べると観光地までの距離も近いです。
仮にバスで行くとしても、主要バス停である武蔵ヶ辻に近くアクセスは抜群です。こういった観光地へ近い点はプラスに働きます。
2.オフィスビルの更新時期である点
(画像はイメージです)
上堤町・下堤町界隈は元々、金融機関や各社の支店や営業所が集まる業務地区として発展してきた地域です。
しかし、近年では老朽化したビルが多いことや、大きな道路に面し駐車場を備えたオフィスビルが多い金沢駅西口、駅からのアクセスが抜群の金沢駅東口にオフィスビルを構える傾向があり、このエリアのリーマンショック後のオフィス空室率は一時期40%~45%で推移したこともあります。
このような点から、オフィスビルを更新・建て替える際に、土地の売却や賃借を行い、ホテル事業者に貸す事例が多く見られます。
建設相次ぐ上堤町・下堤町界隈のホテル一覧
水色が百万石通り沿いの既存ホテルです。
橙色が建設予定または建設中(リノベーション含む)ホテルです。
橙色の部分を拡大するとこのようになっています。
半径200mで7件のホテルが開業しようとしています。
名称 | 形態 | 状況 | 概要 | 開業予定 |
金沢Hostelあるぺん村近江市場(仮称) | リノベーション | リノベーション中 | 地上7階 120室 | 2017年4月 |
下堤町ホテル計画(仮称)(エムジーリース) | 新規 | 計画中 | 地上13階 200室程度 | 2018年9月 |
御宿 野乃金沢(仮称) | 新規 | 計画中 | 地上13階 不明(200室~300室?) | 2018年12月 |
ユニゾイン金沢百万石通り | 新規 | 建設中 | 地上13階地下1階 200室 | 2017年冬 |
日本エスコン 尾山町プロジェクト(仮称) | 新規 | 建設中 | 地上6階地下1階 47室 | 2017年11月 |
三井不動産 下堤町ホテル計画(仮称) | 新規 | 計画中 | 地上13階地下1階 170室程度 | 2019年初頭 |
リビタ ホテル計画(仮称) | リノベーション | 計画中 | 地上6階 不明 | 不明 |
金沢駅周辺でもいくつか計画中
金沢駅周辺でもいくつかホテル計画が浮上しています。
水色が2014年~2015年に開業したホテル
橙色が計画中のホテル
黄緑色が既存のホテル
となっています。
見てわかるように、金沢駅周辺には既にホテルが無数にあります。
現在進行中のプロジェクトは全て新規での建設となります。
名称 | 形態 | 状況 | 概要 | 開業予定 |
ホテルビスタ金沢(仮称) | 新規 | 計画中 | 地上11階 200室以上 | 2018年3月 |
金沢中橋町ホテル計画(仮称) | 新規 | 建設中 | 地上6階 不明 | 2017年10月 |
ハイアットセントリック金沢 | 新規 | 計画中 | 地上15階 地下2階 250室 | 2020年春 |
日本エスコン堀川新町プロジェクト(仮称) | 新規 | 建設中 | 地上13階 121室 | 2018年3月 |
金沢都ホテル再開発 | 新規(再開発) | 計画中 | 未定 | 2020年ごろ |
2018年~2020年にはホテルの大幅供給へ?
2016年11月末の金沢市内にあるホテルは約8700室、旅館、簡易宿所を含めた総数が約9800室あります。
今後、以上のホテルが順調に建設され開業すると、上堤町・下堤町界隈で、少なく見積もって950室程度供給され、金沢駅周辺では、少なく見積もって800室程度供給されます。
合計で1750室程度増える可能性があります。これに、今年だけで30件増加した簡易宿所を含めると…1800室以上は増えることになりそうです。
1800室増えると、金沢全体の宿泊能力が15%上昇することになります。
たった2年程度で総客室数が15%増えることは異例の事態と言ってもいいでしょう。10000室を突破することはほぼ確実と言ってもいいでしょう。
これらの試算は、あくまで現在のホテル客室数に変動はない前提での単純計算です。
金沢の観光客は新幹線開業前の2014年度で844万人です。
仮に、観光客を15%増加させようとすれば、126万人/年の増加が必要です。
北陸新幹線金沢開業効果は続いているものの、開業年の”異常事態”からは落ち着いてきています。仮に観光客が減少傾向で客室数が1800室増えると、既存のホテルが打撃を受け、閉店に追いこまれる可能性も否めません。
これらのことから、金沢にさらに観光客を呼び込む工夫が必要です。
2021年の北陸新幹線敦賀延伸では加賀温泉郷の旅館と金沢市内のアクセスも向上します。ホテルや旅館のつぶし合いになることは避けて、観光客やビジネス客の増加で共栄共存というのが理想的です。
競争が激しくなる中で、ホテルや旅館の強み・個性を打ち出していくことが必要なのかもしれません。