石川県立図書館 は、1966年に金沢市本多町に旧館が開館し老朽化が進んでいたため、金沢市小立野の金沢大学工学部跡地へ移転し、2022年7月16日に新築開館しました。
概要
名称 | 石川県立図書館 |
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所在地 | 金沢市小立野2丁目43-1 |
敷地面積 | 32,878.21㎡ |
建築面積 | 不明 |
延床面積 | 22,720.81㎡ |
用途 | 図書館、駐車場、店舗 |
高さ | 不明 |
構造・階数 | S+RC+SRC+CFT造 地上4階、地下1階 |
駐車台数 | 400台 |
開発事業者 | 石川県 |
設計 | 環境デザイン研究所/仙田満 |
工事着手予定日 | ― |
工事完了予定日 | ― |
石川県立図書館の設計は仙田満氏が会長を務める環境デザイン研究所が選出されました。
石川県では七尾市の弘法湯の建て替えを同設計事務所が担当しています。また、秋田県の国際教養大学内にある「中嶋記念図書館」や「MAZDA zoomzoomスタジアム広島」が有名で、図書館建築においても実績があります。
前回の記事はこちら
外観の様子
それでは、完成した様子を見ていきましょう!
まずは外観から。大きさは本多町にあった旧石川県立図書館とは比較にならないほど大きいです。周辺施設との調和を図るため、高さ制限しており圧迫感は感じられません。
書庫の収蔵能力は約200万冊あり、旧施設は約85万冊だったため2倍以上の収蔵能力を誇ります。
少しアングルを変えて見ると、このように蛇腹のようになっているのが分かります。
大型パネルとガラス面が交互に折り重なって、「本のページをめくる」というイメージを表現しています。
本を表現しているだけではなく、方位磁石を持ってみると、ちょうど西日を抑えられる角度(ルーバーの役割)になっていました。本を守る機能性も兼ね備えているデザインです。
前庭には色とりどりの花が植えられ、ベンチもあったため、快適な気温の時は、ちょっと外で読書も良いかもしれません。
旧金沢大学工学部の正門付近にあったソメイヨシノも植栽されていました。
石川県立図書館1階には、野々市の人気カフェ「HUM&Go」が入っています。カフェでは珍しい、オシャレな小上がりシートもありました。
内部へ潜入!
いざ、内部へ入ると、天井高は約18mで「広い!」という印象が感じられました。
旧石川県立図書館時代は、県立図書館があること自体、認知度が低かったのではないでしょうか。一気に、石川県を代表する図書館へと存在感が高まった気がします。
円形に書架がずらりと並ぶ様子は圧巻です!
内部の通路は円形となっており、加賀五彩で東西南北の4つのエリアが振り分けてあります。道に迷わないための工夫が施されていました。
3階に架かる「ブリッジ」から全体を眺めた様子です。
まさに「知の殿堂」といった感じで、本に取り囲まれました。
天井からは採光があり、ドーム状に木が組まれていました。
1階では石川コレクションとして、伝統工芸をはじめ、石川の文化を本とともに紹介していました。
4階には「リング」と呼ばれる空中回廊があり、本の歴史が紹介されており、ぐるっと1周まわると、国内外の本の歴史が年代ごとに紹介されています。カーペットは群青の間に用いられている「加賀群青」カラーとなっており、落ち着きがあります。
大正時代に書かれた本や海外の古い書物なども手にすることができ、新たな発見に出会えるかもしれません。
本を読むスペースだけではなく、モノづくり体験スペースとして、3Dプリンターや工具が設けられているなど、図書館以外の機能もあります。
このほか、視聴覚機能を備えた階段状のイベントスペースや料理スペースがありました。
…以上が開館直前に訪問した印象を紹介しました。
開館後に訪問した印象
開館直前は実際に使用することはできなかったため、建築に圧倒された印象で、使用感などは分かりませんでした。その後、実際に開館してから訪問して感じたことをまとめます。
まるで秘密基地!お気に入りのスペースで読書ができる!
石川県立図書館がこだわっているものの一つとして、「椅子」があります。
国内外の様々な椅子が館内のいたるところに置かれているため、お気に入りの椅子を探して読書することができます。
こちらは2階某所にあった椅子とデスクですが、広い館内を探検すると、「こんなところにデスクスペースが⁉」といった感じであちこちに点在しています。中には電源コードも刺せる場所もあります。
図書館を探検して自分の好きな場所で読書なり学習するのは今までにない体験となりました。
知らない本に出会える図書館
石川県立図書館では、円形のスペースでは、図書館の従来の分類ではなく12テーマ別に本が並んでいます。例えば「好奇心を抱く」「仕事を考える」「暮らしを広げる」など。
1冊1冊が本の表紙を見せるようにして並んでいるため、気になる本に出合う確率も高いと思われます。
そして、通路が円形になっているため、直交する通路(従来の図書館)に比べると、知らない本に触れる確率も高い気がしました。
各階がシームレスに接続している
円形の書架が階段状になっているため、各フロアの行き来がシームレス(継ぎ目がない)で、スムーズであることに気づきました。
旧石川県立図書館や富山市立図書館(TOYAMAキラリ)も3層、4層の図書館ですが、各フロアに明確な役割があり、他のフロアとの行き来は階段やエスカレーターでしっかりと区切られています。
石川県立図書館では階段状に本が並び、2階にいたのに本を探していたら知らぬ間に3階にたどり着いていた、ということも起こります。
これは他の近隣の図書館にもない感覚で、本との出会いが欲しいならば十分に機能する図書館でした。
さいごに
開館から話題になっている石川県立図書館ですが、他の図書館とは本の出会い方から探し方まで「別物」と考えても良いかもしれません。個人的には泉野図書館や玉川図書館など周辺の図書館とは良い意味で棲み分けができていると思いました。
環境デザイン研究所の文章を引用すると、
貸出中心ではなく課題解決型・探求型であり、コミュニティや伝統文化と連動した新しい型の図書館という基本構想の内容を踏まえ、公園のような、目的がなくても何気なく訪れることができる図書館を目指した。(石川県立図書館-環境デザイン研究所)
とあり、まさに設計にかけた思いが頷ける、そんな図書館でした。
公園のような、目的がなくても何気なく訪れることができる施設といえば、金沢に18年前に開館したある革新的な建物が思い浮かびます。
2004年に開館した「金沢21世紀美術館」です。
金沢21世紀美術館も公園のような美術館を目指して開館しました。北陸新幹線金沢開業効果で2018年度には年間来館者数258万人を記録する、全国に名を馳せる美術館となりました。
来館者数が多いことよりも、今まで美術に興味がなかった市民・県民も気軽に美術館へ足を運ぶようになったのが功績として大きいと思います。
石川県立図書館も同じように今まで図書館・読書に興味がなかった県民が一度行ってみようか、と気軽に図書館へ足を運ぶようになるのか注目です。
(約2年ぶりのブログ更新、久しぶりの慣れない作業でしたが、ここまで読んでいただきありがとうございました!)
石川県立図書館について
名称 | 石川県立図書館 |
所在地 | 金沢市小立野2丁目43-1 |
開館時間 | 9:00~19:00(閲覧エリア・平日) 9:00~18:00(閲覧エリア・土日祝日) 9:00~21:00(文化交流エリア・平日) 9:00~18:00(文化交流エリア・土日祝日) |
休館日 | 月曜日(休日の場合は翌平日) 年末年始 特別整理期間 |