金沢市では城北市民運動公園で計画する「金沢市民サッカー場」の建て替え(敷地内移転)へ向け、公募型プロポーザルを実施することに伴い、”新サッカー場”の概要が公表されました。
公募型プロポーザルとは、複数の開発事業者から優れた開発事業者を選定する方式で、条件としてはコンペ同様に複数の開発事業者が応募しなければ成り立ちません。
今回は、公募資料をざっくりと読み通したところの要点をまとめます。
新金沢市民サッカー場の建設への経緯
まず、なぜ金沢市民サッカー場を建設することとなったのか経緯について見ていきます。
現在の金沢市民サッカー場は1991年度に竣工しました。
1991年と言えば石川県で2度目となる石川国体が開催された年でもあります。金沢市民サッカー場は国体のサッカー会場として使用されました。
収容人数は3,000人ほどで当時のサッカー場としては”最新鋭”だったものの、1992年のJリーグ発足後、瞬く間にサッカー人気が出てきたとともに、2019年現在はJ1からJ3まで38都道府県に55クラブが設立されており、サッカーは日本を代表するスポーツの一つへと大きく進化しました。
ツエーゲン金沢もJFL時代からJ3、2019年現在はJ2まで上がってきており、石川県を代表するプロスポーツチームとなっています。
一方で金沢市民サッカー場は3,000席のまま、トイレは和式のみとなっていました。J2基準には遠く及ばない施設となっているのが現状です。
とはいえ、最初からサッカーコートの四方には10000人収容のサッカー場へ拡張するための用地も残されていました(金沢プールへの動線が曲がっているのはこのため)。
しかし、Jリーグ基準のスタジアムにするためには飲食スペースなど「おもてなし空間」が必要となったため、改修となると隣接するスポーツ交流広場を解体する必要がありました。
スポーツ交流広場は雨水調整池としての機能もあるため、改修から隣接地に移転建て替えをすることが決定しました。
建築物の概要
新サッカー場の概要は以下の通りです。要点をまとめると…
施設用途 | サッカー場 |
---|---|
所在地 | 金沢市磯部町ニ25番1ほか |
敷地面積 | 31,000㎡ |
座席数 | 入場可能数10,000人以上(椅子席で8,000席以上の座席があること) ※将来的なスタンド増設を考慮すること。 (入場可能数15,000人以上、うち椅子席10,000席以上) |
観客席 | 一般観客席、車椅子席、VIP席、コミッショナー席、記者席、 ビジネスシート、スカイボックス |
ピッチ | 105m×68m、サッカー公式試合が開催可能であること |
建設費 | 75億円 |
となっています。
座席について
座席数は入場可能数10,000人以上(うち、椅子席8,000席以上)であることとなっています。これはJ2のJリーグスタジアム基準に準じます。
J1だと入場可能数15,000人以上、うち椅子席10,000席以上となるので、将来的にはJ1のJリーグスタジアム基準へ拡張できるように設計されるということです。
また、観客席についてみていくと、一般観客席、車椅子席、VIP席、コミッショナー席、記者席、ビジネスシート、スカイボックスが設けられます。
特に「スカイボックス」が設けられるのは石川県内では初ではないでしょうか。
スカイボックスとは、上層スタンドに個室のラウンジがあり試合を上から眺められるエリアのことです。他にもスカイボックスより豪華な「VIP席」のほか、「ビジネスシート」など、一般席だけでなく観客席に多様性があるのが特徴です。
施設概要について
以下は、提案者に求められる施設の条件です。
Jリーグスタジアム基準[2019年度用]において、J1・J2基準の
「◎」「○」となっている内容は全て満たすこと。また、「★★★」
の内容については、以下の項目を必ず具備するものとし、他の内容
については可能な限り具備するものとする。・観客席の大容量高速通信設備(高密度Wi-Fi等)を対応すること。
・全ての観客席を屋根で覆うこと。
・ビジネスラウンジを備えたビジネスシートを複数設置すること。
・個室のラウンジと観客席を備えたスカイボックスを複数設置すること。
Jリーグスタジアム基準[2019年度用]を見ると、まあぎっしりと書かれていて、内容がつかみにくいような細かな規定も複数あります。
石川県内でもJ2のツエーゲン金沢の試合が石川県西部緑地公園陸上競技場で行われていることを考えると、西部緑地公園陸上競技場は基準を満たしているものだと思われます。
また、観客席の大容量高速通信設備(高密度Wi-Fi等)を対応することに関してはさすが元ソフトバンク出身の山野市長らしさも出ていますね。ここ近年はWi-Fiが当たり前になっているので当然なのかもしれませんが…。
あとは、全ての観客席を屋根で覆うことに関しては雨が多い金沢では必須条件ともいえるでしょう。このため、少なくとも8000席以上は雨にぬれずに観戦できるようなスタジアムとなりそうです。
新金沢市民サッカー場の建設場所は…?
新しい金沢市民サッカー場の建設場所について見ていきます。
計画地は現在の金沢市民サッカー場の南側の敷地面積約31,000㎡です。
現在は「本田圭佑クライフコート」や「ジュニアスポーツコート」、暫定駐車場などがあるエリアとなっています。
建設予定地となるエリア周辺の様子です。2017年1月の写真なので写っていませんが現在は金沢プールの手前に屋内施設「あめるんパーク」が建っています。
フットサルやサッカーのスポーツコートの他は、広大な砂利の駐車場が広がっています。
イメージは「北九州スタジアム」
金沢市が「新サッカー場」の事業費において参考にしているのが、福岡県北九州市にある「ミクニワールドスタジアム北九州(北九州スタジアム)」です!
ミクニワールドスタジアム北九州は2017年2月に完成したスタジアムで、J3チーム「ギラヴァンツ北九州」の本拠地となっています。
入場可能数は15,300人と新金沢市サッカー場の1.5倍の規模となりますが、屋根の雰囲気、観客席からピッチまでの距離やVIP席、スカイボックス席の設置など、おそらく参考にしたであろうアイデアが詰まっていると思います。
1階スタンド下には「にぎわいプロムナード」といわれる賑わい施設があり、試合開催時には飲食店などが設けられるなど、雨にぬれずにスタジアムグルメやグッズを買えるような空間が設けられています。
ミクニワールドスタジアム北九州については以下のサイトに詳しく書いてありました。
http://sistadium.web.fc2.com/mikuni.htm
動き出した新金沢市民サッカー場の計画!
「(仮称)ツエーゲンスタジアム」と名付けておきます。
今後の計画進展が楽しみですね。