金沢美術工芸大学が金沢大学工学部跡地への移転を計画しています。
2017年3月に金沢美術工芸大学基本構想が発表されました。(最下部にもリンクを貼っておきます)
金沢美術工芸大学(金沢美大)の現状
金沢美術工芸大学は1946年に金沢美術工芸専門学校として、現在の石川県立歴史博物館となっている赤レンガ倉庫を校舎として設置され、1955年に金沢美術工芸大学となり、1973年に金沢刑務所跡地に現校舎が建設され現在に至ります。
現キャンパスの課題としては、
・施設の老朽化(古い建物では築40年以上が経過)
・機能強化のためのスペース不足と芸術分野の多様化、新規分野への対応(学生数や保管作品の増加で教室や製作スペースの不足)
・非効率な施設配置(増改築を繰り返しキャンパス内の移動が無駄に多くなっている)
・バリアフリー、ユニバーサルデザインへの対応
などが挙げられています。
移転先は?
移転先は、金沢市小立野にある、金沢大学工学部跡地です。
現在の図書館から東へ2.5km先にある場所で、2007年に金沢大学移転計画の下、角間キャンパスへ移転した後、跡地利用が課題となっていました。
工学部跡地ということもあり、一時期は土壌汚染も見つかり、ここ数年は土を総入れ替えする工事が行われていました。
敷地面積は81000㎡あり、中心部にしてはかなり大きな敷地です。
ここを石川県が34000㎡、金沢市が47000㎡取得し、石川県が石川県立図書館、金沢市が金沢美術工芸大学を移転させる計画です。
また、石川県と金沢市が取得する土地の境界にはアクセス道路を整備し、山側環状からのアクセスを向上させます。
敷地面積は現在より少し大きな程度です。
しかし、現校舎の敷地も一部利用する方針を示していることから、現在よりも大きなキャンパスになることは確実です。
金沢美大の施設整備の方向性
金沢美術工芸大学が金沢大学工学部跡地へ移転することに伴う施設整備の方向性としては、
Ⅰ 金沢から世界に拓く 美と知の創造拠点
Ⅱ 地域と学生をつなぐキャンパス
の2つが挙げられています。
・世界の交流拠点都市金沢の新たなシンボルとして、美と知の創造拠点の形成
・芸術系大学にふさわしく、かつ金沢の新たなシンボルとなるような質の高い創造的な建築デザイン
も盛り込まれ、建築デザインも金沢のシンボルとなるようなものになるとのことで非常に楽しみです。
金沢美大に新たに設置を検討している施設
移転に伴い、金沢美大に新たに設置を検討している施設もあります。
メディアセンター
大学が持つ資料やデジタルアーカイブなどの知的財産を管理するとともに、映像表現やアニメーションなど、メディア芸術における人材を育成するため、スタジオや編集室等を備え、多様なメディア環境に対応した機能をメディアセンターとして整備します。
国際交流センター
欧米や姉妹都市などの交流協定締結校とのネットワーク強化や金沢美術工芸大学で設置したアジア美術戦略会議の開催、留学生との共同制作や交流などを実践するための機能を国際交流センターとして整備します。
社会連携センター
企業と開発した商品・サービス数ランキングで1位を獲得した金沢美術工芸大学がこれまで取り組んできた共同研究やものづくり産業との連携を積極的に推進するため、その活動や成果を公開するスペースを確保するなど、産学連携を実践していくための機能を社会連携センターとして整備します。
金沢 21 世紀美術館、金沢卯辰山工芸工房、金沢湯涌創作の森、金沢市民芸術村などが市内に集積する強みを生かし、金沢美術工芸大学との連携強化に努めます。
大学附属美術館
大学が所蔵する美術作品や資料などを広く一般市民に公開することができ、収蔵機能を備えた芸術系大学にふさわしい大学附属美術館を整備します。
サテライトキャンパス
大学の授業や制作活動、作品展示ができ、地域との交流ができるサテライトキャンパスについて、旧学校施設等の活用を検討するなど、まちなかにおける活動拠点の設置に取り組むとともに、学生が卒業後も本市で制作活動に励むことができるよう、支援のあり方について検討します。
地域住民や一般の人が特に期待できるのは「大学附属美術館」と「サテライトキャンパス」でしょうか。
金沢美大を卒業された方は、「時をかける少女」「サマーウォーズ」などの監督である細田守氏、「かくかくしかじか」などを描いた漫画家の東村アキコ氏、JR東海の「クリスマスエキスプレス」などのCMディレクターを務めた早川知良氏、「スーパーマリオ」「ドンキーコング」「ゼルダの伝説」の生みの親である宮本茂氏など、現在活躍されている方を上げるとキリがありません。
大学附属美術館には、日本画、油絵、彫刻、工芸の展示のほかに、現在活躍されている方々の展示もあると注目を浴びそうですね。
サテライトキャンパスではワークショップや金沢 21 世紀美術館、金沢卯辰山工芸工房、金沢湯涌創作の森、金沢市民芸術村でのイベントなどがあると、地域との連携がとれそうです。
また、向かいに整備される石川県立図書館も「21世紀にふさわしい全国の最先端をいく中核図書館に仕上げる」、新図書館について建築も「レガシー」になるよう、質の高いものにすべきとするとのことなので、建築についても互いに調和しつつ斬新なものになってほしいところです。
そして、石川県が石川県立図書館、金沢市が金沢美術工芸大学をそれぞれ独自のプランで建設するのではなく、石川県と金沢市が調和をもって金沢のシンボル、一つの空間を作り上げていってほしいです。
今後のスケジュール
今後、基本計画を策定し、施設配置や規模、詳細なスケジュールを明らかにしていく予定
とのことなので、まだしばらく時間がかかりそうですが、定期的にブログで取り上げていきたいです。